06/30/2012

『DECO・CHAT vol. 1 旅と本のコラム』取扱い店一覧

 **新しい日記はこの下からです**

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 京都発、本が好きでたまらない人のための小冊子、『DECO・CHAT』[デコ・シャ]です。vol. 1の特集は「旅と本のコラム」(deco社 10月1日発行 定価700円)。


 本を片手に京都を出発。日本中をぐるりと廻って世界へ。そのまま旅を続けて帰らなくてもいい。ふるさとへ帰ってきてもいい。どこにいても、いつも本といっしょ。ポケットに本があると安心だ。本は語りかけてくれる。そっとしておいてもくれる。やさしい歌を歌ってくれる。いっしょに青く広い空へ飛んでいくことだってできる。


 旅人は名うての本好きたち。好きな作家のまねをして行き先も知らないバスの旅に出てみたり…留学先での孤独な日々に一冊の絵本出会ったり…。25人の執筆者が旅と本の話を語ります。

『DECO・CHAT』をポケットに入れて、旅に連れていってくださるとうれししいです、


 執筆者のみなさんは、こんな方たちです(敬称略・順不同)。


山本善行(古書 善行堂) 山下賢二(ガケ書房) 扉野良人(りいぶる・とふん) 島田潤一郎(夏葉社) 北條一浩(フリーペーパー『buku』) 金子彰子(詩人。『二月十四日』) 吉田省念(ミュージシャン 吉田省念と三日月スープ、くるり) 村田昌嗣(古本 固有の鼻歌) 杉山拓(ミュージシャン風博士) 能邨陽子(恵文社一乗寺店) うめのたかし(ガケ書房 古書コショコショ) 砂金一平(あいおい文庫) 鈴木潤(メリーゴーランド京都) 小原久直(古書 胡蝶書坊) 廣瀬由布(古本 徒然舎) 守家正憲(小門光男木彫記念館) 西川由季子(『Sanpo magazine』) 津田京一郎 田中大 松岡高 木更津啓 岡田将樹 中原伸二 airbug 中務秀子 『DECO・CHAT』[デコ・シャ]

NEW! リトルプレス専門ネット書店トマソン社さんでのお取扱いが決まりました(12.15)。
NEW! 岡山 万歩書店 平井店さんに追加納品いたしました(12.23)。
NEW! 東京・渋谷 SHIBUYA BOOKSELLERSさんでのお取扱いがはじまります。1/6〜リトルプレスのフェアにて(12.28)。
NEW! 倉敷 蟲文庫さんに追加納品いたしました(12.28)。


 現在お取扱いただいている書店・古書店の一覧です。
 なお『DECO・CHAT』に関するお問い合わせは、ブログ左上の"About"(プロフィール)の連絡先よりお願いいたします。

*京都
 古書善行堂  ガケ書房  恵文社一乗寺店  メリーゴーランド京都

*大阪
 古本 固有の鼻歌  長谷川書店 一色文庫

*神戸
 トンカ書店  海文堂書店

*東京
 盛林堂書店  古書 信天翁  古書 ほうろう  古書 音羽館  古書 往来座  古書ますく堂  百年  信愛書店  茶房 高円寺書林  ブックギャラリー ポポタム  トマソン社() SHIBUYA BOOKSELLERS

*北海道
 古本とビール アダノンキ  雑誌専門の古書店 tronika(トロニカ)

*神奈川県
 獅子ヶ谷書林

*長野 
 ch.books チャンネル・ブックス

*岐阜
 古本 徒然舎

*岡山
 万歩書店 平井店  蟲文庫

*福岡
 11月3日 ブックオカ 第6回けやき通り一箱古本市

*全国津々浦々
 風博士のライブ会場 (

*埼玉
  忍書房

*名古屋
 シマウマ書房

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01/29/2012

オオララ

Photo 1月29日日曜日。雪交じりの風が吹く。さて…何を…。
 
 1月23日月曜日。 
 意外にきのうの疲れは出ず。一日二日遅れて出てくるかも…。日本の古本屋から福原麟太郎『詩心私語』が届く。『ぽかん』2号の「ぼくの百」にNさんがあげていた本。次男提出を3週間後にひかえ、きょうも午前様で会えず。

 1月24日火曜日。
 体調逆戻り。薬のため夜中何度も起きる。

 1月25日水曜日。
 幼稚園へ出張。今年はどういうわけかひどく荒れている子どもたち。お母さんたちにおしゃべりと写メを控えてもらって、なんとか落ち着いた時間がもてた。親がポイントときょうもおもう。
 いったんもどってブッダ・カフェへ。バス車中、福原麟太郎『猫』を読む。夜、招かれた先でとても気持ちのいい時間をすごした。暖かい心持ちになる。

 1月26日木曜日。
 ごくごく寒く、終日家。『猫』を読了。心穏やかに保つ術がここに書かれている。ブッダ・カフェの会報『ポオクス・ポオクス』マイナス2号を読む。次回はわたしが書く番。次男、日付の変わらないうちに帰宅。フウフウと鍋物を。昼も夜も熟睡。

 1月27日金曜日。
 福原麟太郎『詩心私語』を少し読む。数日前、友人の大学3回生の娘さんから、美しい文章が読みたいから何かすすめて、とメールを受け取った。何日も美しい文章のことをかんがえてうれしかった。「『檸檬』に溶けています…より多彩に変わってくれる「言葉」を使っている人の文章は素晴らしいと思います。美しいと思います」と返事がきた。今度ショパンを弾いてきかせてほしい。
 
 1月28日土曜日。
 早朝、富士五湖のあたりでたて続けに大きい地震とニュース。起きて1週間分の日記(手帖)を思い出しながら書く。右目の眸裂班がよくなっていた。まだ内側が暗いが吹雪のような視野が晴れた。手紙の整理少し。『Love is 永田助太郎と戦争と音楽』が読みたくなって、本棚を探すけれど見あたらない。山田太一ドラマ『キルトの家』前編見る。二回で終わるのはどうか。

この日大阪で開かれた中尾ハジメさんのトークイベントには結局行けなかったのですが、中尾さんの著書『原子力の腹の中で』(編集グループSURE)は二月ほど前に読みました。これだけが正しいとはおもいませんが、今回の事故に対する視座をわたしはこの本に置くことにしました(ガケ書房さんで通販してもらえます)。

 1月29日。
 前夜夜中に、オオララ、治癒のニルヴァーナ。長かった。きょうは次男の誕生日。みなで食事に行く。

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01/23/2012

この頃読んでいた本

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 1月23日月曜日。きのうの夜はよく眠れた。昼間明るい陽射しがあったけれど、夕から雨。つめたい雨。

 先週は長い時間のかかる病院通いでした。目の具合がよくなくて。お薬がうまくあったのか、土曜日あたりから復調。ほんとによかったね。

 そしてきのうは海文堂のトークイベント「C'est Moi —『サブ』は、「私です」」に行ってきました。いやあ、楽しい午後でした。
 スタイルを好み、ジョークを忘れず、誇りを捨てず、ぶざまに生きることを最後まで拒んだという男、小島素治。著者北沢夏音さんはじめゲストの方々がだれもみな、小島のことを語るとき、ちょっと頭をかしげるようにしてに苦笑いするのが印象的だった。”困ったやつだったんだよ、あいつは…。”ただ、忘れられない人だった。

 いまこのときのように、現実が足もとから崩れ落ちそうな気がするときに、そんな酔狂な人物におもいをいたすことは、どういうことなのか。けれどこの今をつくったのが、効率やら何やらをかんがえるのが苦手で、あちらとこちらのあわいにしか立とうとしなかった者ではないことだけは、はっきりしているとおもう。

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01/17/2012

福原麟太郎『猫』

Photo_2 1月17日火曜日。晴れて風。雲がはらわれて明るい空の色。

 友だちと会い、お昼に蕎麦を食べた。そんないい日だけれど、体調はふたたび下降気味。帰宅後病院の予約をとる。あすとあさっての2日続き。やれやれ…。まあでも、気持ちは落ちこんでいません。こんな波の具合もあるかなあというくらい…。ただ読書にひたりきれないのはさみしい。少しずつ読んでは置いてしまう。集中するには体の力がいるのですね。

 いいニュースもあります。京都府立図書館の蔵書に、『DECO・CHAT(デコ・シャ)vol.1 旅と本のコラム』を加えていただきました。京都新聞の記事が担当の方の目にとまったのだそうです。

 読書は、福原麟太郎『猫』(宝文館・昭和26年)をゆっくりと。ほとんどどこかで読んだ文章にほっとする。ああ、こういうときは無理をせず再読がいいのだったなあ。それも、古い、手に馴染む本での再読が。

 それから、加藤一雄『雪月花の近代』もぱらぱらと。昨夜、BSプレミアムで、溝口健二の『祇園の姉妹』を観たから、この本を思い出した。映画は1936年(昭和11年)の作。このころの京都…なんて冷ややかでしっとりと、いいのだろう。18歳の山田五十鈴演ずる芸妓”おもちゃ”の凄み…。

 ああ、こんな本を取り出していると、すっかりひたりきって読んでいたころを思い出して、かなわない。でも読むと思い出せる。それはいいのだけれど…ただ、まだ読まなかったころがなつかしい。


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01/16/2012

覚えていらつしゃる?

Dscf5840 1月16日月曜日。曇。

 土曜日、アトリエを終えた夜、今出川にある「糸あやつり人形劇団みのむし」さんに行ってきました。その日は大人向けのプログラム、「ヘルスセンター」。これがとっても楽しくて。ユーモアのセンスがきらり。ゆるやかで、かつ、きめ細かな感性。劇特有の我のつよさを感じさせない、のびやかさ。何より、主宰の飯室康一さん自身が楽しんで演じている様子がとても気持ちよかった。上演中、飯室さんの姿は影の中に隠れていた。演じたあと、制作中の人形を明るいところで動かして見せてくださった。すると、人形が飯室さんのような、飯室さんが人形のような…。ここに、嘘をいわない大人がいる、とうれしくなった。

 いいものをみたなあ。人形っていいなあとおもった。おもった? ううん、思い出した。子どものころ、人形とよく話したこと(いまもときどきやるけど…)。そのとき、人形と、ほんとうに話していたとおもう。人形は言葉を返してくれた。
 人形に語ってもらうことで、何かが言える。どうしてなんだろう。人形に言葉をあずける? うまく言えないけれど…。今度は子どもたちにみせてあげたいとおもった。

 きょうは天野忠『わが感傷的アンソロジイ』を読みかえした。こんな詩が引かれていた。


   「全生涯」より  リンゲルナッツ 

 「覚えていらつしゃる?」
 夕方、一日蠅【かげらふ】の妻が尋ねた
 「階段の上であのころ 貴方のちーずの切れはしを盗んだのを」

 老人らしい清らかさでかげらふの夫が云つた
 「ええ 覚えていますよ」
 そして彼は微笑した 「昔々のこと——」

 「覚えていらつしゃる?」彼女は更に尋ねた
 「妾があのころ第六番目のひざ下に
 あの重い敗血症を患つたのを」——

 「さうだつたかな」夫は半ば夢み心地で云つた

 「覚えていらつしゃる? 貴方を恨んで妾が蠅取紙自殺をしかけたのを——
 それから妾が最初の卵を産んだのを——
 覚えていらつしゃる? あれが五時半だつたのを——
 それから妾がミルクの中へ落ちたのを」

 かげらふの夫はもう何も答えなかつた
 疲れて低く独りごちた
 「遠い遠い昔のこと——遠い——」

     (板倉鞆音訳『運河の岸辺』第一書房より)

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01/12/2012

荒賀憲雄詩集『ある微光』

Photo_3 1月12日木曜日。晴。朝、雪がつもっていたのに猫たちが外に出たがるなあとおもったら、外は意外にあたたかいのでした。きょうは自室でがんばるね、と次男君にいうと、ぱっと明るい顔になった…なんだか心配かけちゃってたのかなあと反省…。
 
 月曜日、グリル&カフェ猫町さんでアトリエのミーティング。本棚に『DECO・CHAT(デコ・シャ)』をかざってくださっていた。感謝感謝。

 月曜、水曜、ガケ書房さんへ注文の本を受け取りに。もう長く新刊の本はほとんど注文して買っています。ネット書店より時間はかかるし、寒いとき体調のわるいときはちょっと手間もかかります。でも、好きなお店でかわす軽い会話はお金で買えるものではないですし。バックヤードから出てきたという古いフリーペーパー、『鬼きち』(1〜3)や蟲文庫さんの通信を、本のあいだにはさんでおいてくださった…。うれしいなあ。

 届いていたのは、増補版『ラブ・ジェネレーション』(早川義夫・文遊社)。72年初版のころやその後の文庫化のときには読んでいません。ぞくっとする言葉の数々。懐かしさで読むのではない感じがしています。
 渡辺温『アンドロギュノスの裔』(創元推理文庫)。渡辺温の初の文庫版全集。清流出版のサイトにいい紹介文がありました。久生十蘭『十蘭レトリカ』(河出文庫)も。
 
 すてきなバッグをさげたmasakingさん()に出会って、いっしょに善行堂さんへ。ガケさんから善行堂さんへは歩いてすぐなのです。わたしは今年初。masakingさんは3回目だとか。Fさんにもお会いする。昨年いい本を入手されたというお話をうかがって、自分のことのようにうれしかった。

 いろいろ見せていただいて、長谷川利行『どんとせえ!』(求龍堂)と、荒賀憲雄詩集『ある微光』(文童社)をいただきました。荒賀憲雄はまったく知らない詩人ですが、やさしいいい言葉だなあとおもって。外に出ると細かい雨。その雨が今朝つもった雪に変わったのでした。


  「鳩」 荒賀憲雄

 そいつを
 後ろからふいに抱きすくめると
 意外にも
 掌のなかに
 ずっしりと熱い。
 羽毛に包まれて
 はげしく動く血のけはい

 わたしはそれを
 夜の部屋へ
 放してみる。
 するどい羽音よりも
 きく きく きくと
 身内に骨のふれ合う
 さみしい音を
 青い水のようにいっぱいにひろげて
 とびめぐる

 十年前、下宿で
 そのようにしてひとり飼っていた
 小さな生きものを
 みどりの陽のなかで
 いま後ろからふいに抱きすくめようと
 おさないわたしの娘が
 追っている

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01/07/2012

『Get back,SUB!』読了。

Photo 1月7日土曜日。また痛みが出る。病院へ。細かな雨が降って、ダウンジャケットに跡をつけた。

 長い待ち時間のあいだに、一度中断していた『Get back,SUB!』を読みつぐ。カタカナ語の多い文章にややたじろぐ…こともあるけれども、そこにさえ慣れれば70年代、『SUB』というある洗練された雑誌を出していたひとりの男の軌跡はぞくぞくするほど面白い。述べられているのは60、70,80年代が主。その太い文脈から細く流れ出す葉脈のように、ちらりちらりと登場する…滝口修三、名取洋之助、辻まこと…などの人名。20年代、30年代のあたりから長く続いてきた雑誌の流れがそこに感じられる。そして現在にも通じて、これからいったいなにをすれば…という思いにもさそわれる。

  +++++

 きょうは何通かきれいな葉書が届きました。中にはイタリアからの便りも。日本はGiapponeというのですね。手紙というのはほんとうにいいものですね。年賀状書きにあれほどふうふう言っていたのを棚に上げて…。

  +++++

 次は、寺島珠雄『断崖のある風景 小野十三郎ノート』(プレイガイドジャーナル社)を読む予定。

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01/05/2012

新しい年

Photo_2 1月5日木曜日。うっすらと雪がつもっている。日が射してぽたぽたと滴の垂れる音。その音がときどきタタタッと大きくなる。どこか樋に隙間でもあいているのかしら…。

 たった3品しかつくらなかったおせち料理は、なんだか若いひとたちによろこばれ、2日のお昼にはすっかりなくなっていた。息子たちが子どものころの写真をみたり、ふわふわ笑いながらトランプをしたり、なんでもないけれど長いこともたなかった時間がたのしかった。2日、3日と恒例の年明けてからの賀状書き。手書きで50枚を越えたあたりで、来年はきっと印刷にしようと思ったりする。

 4日は病院へ。薬をもらってねていたら、5日朝、暮れ以来の不調がようやく持ち直してきた。

『芸術新潮』の1月号はベン・シャーンの特集。若いころからずっとベン・シャーンの影響を受けているという和田誠のインタビューなど読みごたえがある。三が日はこの雑誌やここに出て来る絵本『Love Sonnets』(1964)をながめていた。

 いま、神奈川県立近代美術館葉山で「ベン・シャーン クロスメディア・アーティスト展」が開催中。1970年、1991年以来の大きな展覧会らしい。その後名古屋・岡山・福島に巡回の予定()。

 一昨年だったか寺町の画廊で、ベン・シャーンの遺作『一行の詩のためには…:リルケ「マルテの手記」より』をみた。今回またこれをみるために名古屋へ行こうとおもう。


 一行の詩のためには
 あまたの都市を…
 あまたの人々を
 あまたの事物を
 あまたの禽獣を知らねばならぬ。
 空飛ぶ鳥の翼を感じなければならぬ。
 朝開く小さな草花のうなだれた羞らいを究めねばならぬ。
 詩人は思いめぐらすことができなければならぬ。
 ——まだ知らぬ国々を道。思いがけぬ邂逅。
  遠くから近づいて来る見える別離。
  まだその意味がつかめずに残されている少年の日の思い出。
 それがよくわからぬため
 むごく心を悲しませてしまった両親のこと
(ほかの子供だったら きっと夢中に喜んだに違いないのだ)
 さまざまな深い重大な変化をもって
 不思議な変化をみせる少年時代の病気。
 静かなしんとした部屋で過ごした日。
 海べりの朝。
 海そのものの姿。
 あすこの海、ここの海。
 空にきらめく星くずとともに
 はかなく消え去った旅寝の夜々、
 いや、ただすべてを思い出すだけなら、
 実はまだなんでもないのだ。
 詩人はそれを思い出に持たねばならない。
 一夜一夜が、少しも前の夜に似ぬ夜ごとの闇の営み。
 産婦のさけぶ叫び。
 白夜の中にぐったりと眠りに落ちて、
 ひたすら肉体の回復を待つ産後の女。
 死んでゆく人々の枕もとに付いていなければならぬし、
 開け放した窓が風にかたこと鳴る部屋で
 死人のお通夜もしなければならぬ。
 追憶が多くなれば
 次にはそれを忘却することができねばならぬだろう。
 そして、
 再び思い出が帰るのを待つ大きな忍耐がいるのだ。
 思い出だけならなんの足しにもなりはせぬ。
 追憶が僕らの血となり、目となり、表情となり、
 名まえのわからぬものとなり。
 もはや僕らと区別することができなくなって、
 初めてふとした偶然に、
 一編の詩の最初の言葉は、
 それら思い出の真ん中に思い出の陰から
 ぽっかり生まれて来るのだ。

        リルケ「マルテの手記」より

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12/31/2011

2011年読了本ベスト10

Photo 12月31日土曜日。大晦日。ほぼ10年ぶりにおせちをつくりました。ふぅ。わが家の今年の重大ニュースをあげるとすればこれが入るかしら…。

 では2011年の読了本ベスト10を。順不同です。

『年月のあしおと』正続 広津和郎 講談社 昭和38年・42年
『関口良雄さんを憶う』 夏葉社 平成23年復刊
『いまそかりし昔』 築添正生 りいぶる・とふん 平成23年
『彷徨と回帰』 中野章子 西日本新聞社 平成7年
『叔父さんの魔法』 菅原克己 朔人社 1975年
『星を撒いた街』 上林暁 夏葉社 平成23年
『本と怠け者』 荻原魚雷 ちくま文庫 平成23年
『幻燈機のなかで』 黒瀬勝巳 編集工房ノア 1981
『ボヘミア歌』 福原清 海港詩人倶楽部 大正15年
『For Everyman vol.1』 河田拓也編集発行 平成23年

 
 今年もほんとうにいろいろとありがとうございました。みなさまよいお年を。

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12/30/2011

年の暮れ

Photo_2 12月30日金曜日。晴。寒。
 なんともしょぼくれたことですが、体調がいまひとつ…。とぼとぼ歩きの年末です。

 思い返してみると、放心しっぱなしの一年でした。1月2月がずっと遠い昔におもえ、3月以降は長く終わらない一日を過ごしていたような気がします。それはまだ終わっていないけれど…。

 2月には、夏葉社さんから出た『関口良雄さんを憶う』を読んでいたんですね。そのときと3月11日以降は、まるで世界が違ってしまいました。

 そのころの手帖の日記を今読み返してみると、動揺していたし、射すくめられたようにぼうっとしていたことを思い出します。しばらく小説は受けつけず、その代わり詩や昔話がきれいな水のように心に沁みました。ようやく小説が読めるようになったころ、木山捷平の大陸物を読み、初読のときとは違ってあまりにリアルに感じられ、木山捷平のすごさに息をのむ思いでした。

 3月の末、友人と山口県の香月泰男の生誕百年展を観にいきました。のどかにたゆたう瀬戸内の海沿いの高速を、自衛隊の装甲車が何台も北へ向かっていきました。中国山地の山間の道を抜けて香月泰男の生誕地、三隅へ。生家を探しあて、家の向かいから日本海へ抜けて流れるゆるやかな川沿いを散歩しました。その河口のあたりに金子みすゞの生家があるというので、とうとうそこまで足をのばし、漁港の定食屋で地元の人たちとおいしいお昼をいただきました。

 7月、長男氏が結婚。ずっと気がかりだった彼がしあわせそうにしていることに肩の荷が下りる思いがし、こうして人として時をつないでいくために自分はあったのだとおもったりしたことです。それから、彼らと入れ替わりに旅に出ました。帰った翌日、小冊子をつくろうと決めていたのはどういう気持ちだったのか、いまもうまく言えません。ただ、表現したい、自由になりたいという思いが、いつもあと一滴足りなかったのが、いろんなことが重なりあって、ふいにコップからあふれたような、そんな感じだったのだとおもいます。

 あの冊子は自分のものというより、書いてくださった方々のものですが、やはり自分のためにつくったと言わなければならないかも知れません。わたしはやはり言葉を信じたかったし、そのために言葉に直に触れる必要があったので…。
 声をかけた方すべてが快く執筆を引き受けてくださり、その方たちを通じて書店さんや古書店さんとのつながりもできました。そこから読者の方々に直接手わたしてもらっているのは、いまもほんとうにありがたくおもっています。

 長々書いてしまったけれど、少し元気になってきたのかな…。あす今年のベストを出しますね。たぶん・・・。

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«煙のように。ゼーバルトのことなど。